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ワインの作り方を左右する秘訣!酵母って何だか知ってる?
「酵母」という言葉一度は聞いたことがあるかと思いますが、一体これがどんな働きをするものなのか知っていますか?実は、酵母がいないとワインを作ることができないんです!
つまり、酵母がワインの出来を左右すると言っても過言ではありません。
今回は、この「酵母」に焦点を当てていきましょう。
ワイン作りの鍵!「酵母」とは?特徴を紹介
酵母とは、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する微生物です。果実や樹液、土壌、食品など、自然界のさまざまな場所で生息している、広く見ればカビの仲間に入ります。大きさは5~10ミクロンほどの球形や楕円形の形状です。
酵母の働きによりアルコールが生成されるため、お酒造りに欠かすことはできません。アルコール生成されることを「アルコール発酵」と呼び、造るお酒によって温度などの特定条件が変わります。
一般的に赤ワインは20~32℃、白ワインは10~18℃の発酵温度が理想です。同じ酵母、同じブドウ品種を使用したとしても、赤ワインか白ワインかによって温度が変わります。造るお酒が異なるので条件も変わってくることが、わかってもらえたのではないでしょうか。
「パン酵母」は聞いたことあるけど、それは別物?
自然界に様々な酵母があるとお話ししたとおり、パン酵母はその中でも特にパン作りに適した酵母を指します。
パン作りだと「イースト」と「天然酵母」をよく耳にしませんか?これらも大きくまとめると、パン酵母に含まれます。
イーストは、パンの発酵に適した酵母菌だけを集めて純粋培養したものを指します。天然酵母は、果物や穀物など自然のものに付着した酵母菌を発酵させたものです。
どちらも酵母には変わりありませんが、製品として使われるまでの過程が異なります。その過程が異なるので、発酵状態や焼き上がりにも変化を与えます。そのため、目的に合ったものを使うことが重要です。
ワインの酵母は2種類
パン酵母でイーストと天然酵母があったように、ワイン酵母にも大きく分けると天然酵母と培養酵母の2種類の酵母があります。
天然酵母
自然界のいたるところにいる酵母は、ぶどうの実にいることも例外ではありません。ここにもさまざまな天然酵母が付着しているのです。
目で見ることはできませんが、かなり多くのこの酵母たちが表面にくっついてぶどうを守っているため、ぶどうとは切っても切れない関係性といわれています。
天然酵母で醸造する場合、ぶどうを発酵タンク入れた後アルコール発酵が開始するのを待ちます。だんだんと酵母が発酵して炭酸ガスを出し始めるので、結果的に余計なものを何も入れることがありません。つまり、そのぶどうに付着していた酵母だけで造ったワインができあがります。
ビンに詰められるまで人工の酵母が一切関わっていない、というのが天然酵母ワインです。
培養酵母
パン酵母のところでご紹介したイーストのように、培養酵母とは自然界にあった優良な酵母を人の手によって培養して商品化されたものを指します。あくまでも自然酵母を培養しているだけなので、「人工酵母」とは呼ばれません。
培養酵母で特に有名なのは「サッカロミセス・セレビシエ」です。発酵力が高くアルコールをたくさん作ることができ、香りもよいのでワイン造りに多く用いられます。
培養酵母を使用しワイン造りをする場合でも工程は大きく変わらず、ぶどう(ぶどう果汁)が入ったタンクに加えることで発酵させます。
どっちの酵母がワインに適している?
天然酵母と培養酵母のどちらが適しているかというのは一概に決めることはできません。
天然酵母はぶどうの生育過程で表面に棲み着いたものです。そのため、産地の気候風土や個性を重要視するワイナリーは、天然酵母を選ぶ傾向が強くなります。
しかしワインに良くない雑菌が混ざっていたり、発酵力があまり強くなかったりといったリスクもあります。
培養酵母は選り抜きされた菌種ですでに増殖させたものを添加するため、発酵力も強くワインの味も質も安定しやすくなります。
天然酵母だから美味しいことも、培養酵母だから質が悪いこともありません。
どちらを使って造るのかは、造り手のワイン造りに対する姿勢や思いに委ねられています。
ワインが自家製で作れる?!
ワイン酵母自体はぶどうに付着しているので、実は簡単に自宅で作れてしまいます。
用意するのはこの5つだけ。
- 蓋付きの容器(ペットボトルでもOK)
- ボウル
- ざる
- じょうご
- ぶどう
ここで重要なのは何の品種のぶどうを使うかです。スーパーで見るようなぶどうは不向きなため、目にしやすい巨峰などは適しません。ワイン用としてよく用いられるのは、色が濃く黒っぽい見た目のぶどうだといわれています。
作り方は簡単で、潰す・混ぜる・放置の3工程で出来上がります。
①潰す
ぶどうの表面に酵母が棲み着いているため、洗い流してしまわないように基本的には洗わずに使います。
ボウルにぶどうを入れ、皮ごと潰します。もし用意できればマッシャーがあると便利です。
②混ぜる
潰したぶどうをじょうごで蓋付きの容器に移し替えます。発酵してブクブクと膨らんでくるためギリギリまで入れず7分目までに留めておくことが大切です。
移し替えてからは2〜3日に一度中身を混ぜましょう。皮や種が浮いたままにしておくとカビの原因となるため、混ぜ合わせる必要があります。
③放置
②の工程を1〜2週間続けるとワインの出来上がりです。
ただし注意点として、放置するときには酵母が呼吸できるように蓋を閉め切らずにしておきましょう。また、閉めてしまうとガスが膨張して爆発する原因になりかねません。
酒税法があるから作る際は注意が必要
ワインを作るにあたって気をつけないといけないのが、酒造法です。日本では酒税法により醸造許可のない者が自家製で酒造することが禁止されています。
自家製で作る際に注意してほしいのは、アルコール度数を1%未満に留めること。酒税法ではアルコール1%未満は「酒類」に分類されないため、酒税法に触れることはありません。
「アルコール度数なんてわからないよ」と思われるかもしれません。ワインはぶどうに含まれる糖や追加する糖分が酵母菌によってアルコールに変化するので、糖分を減らすことで度数は調節できます。
糖度が高くないぶどうを使用し、糖分を途中で追加しないようにしましょう。
ワイン酵母だけ買うことはできるの?
酵母は酒造に関わるものだから一般人には手に入るのが難しいと思いきや、実は簡単に誰でも買うことができます!Amazonや楽天などのオンラインストア、輸入商品が置いてあるスーパーで見つけられるでしょう。
ワイン酵母があれば、ぶどうジュースに入れるだけで簡単にワインが作れます。とは言っても先述したとおり日本には酒税法があるので、アルコール度数1%以上のお酒を作るのはご法度です。
ワイン酵母はパンにも使える!
お酒も満足に造れないし、「ワイン酵母ってなんで一般販売されているの?」って疑問に思いませんか?ワイン酵母と呼ばれていますが、パン作りにも使えるんです。
同じ酵母なので、基本的には酵母を使用して作るパンのレシピで試してもらえばOK。ただし、パン作り用の酵母ではありません。膨らみ方が通常のパン酵母とは異なるので、そこも含めて楽しんで作ってもらいたいです。
まとめ
自家製でも簡単にできてしまうくらい単純な工程で完成するワインですが、そこには小さな働き者である酵母の存在が欠かせないことが良くわかったのではないでしょうか?
生産者はぶどうの品種以上に酵母について悩むかもしれません。しかし、飲むときにここまで考えている人は少ないかと思います。
たまには酵母に目を向けてワインを選んでみると、おもしろい発見・飲み方ができるはずです。