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ワインのフルボトルはなぜ750ml?理由や世界のボトルの特徴を紹介
ワインのフルボトルは、ほとんどが750mlで統一されています。
ワインを飲むうえで750mlだから困ることはあまりないでしょう。しかし、なんとなく「中途半端だな」と気になる方もいらっしゃるはずです。
本記事では、ワインのフルボトルが750mlである理由など世界のワインボトルについて詳しく解説していきます。
最後まで読めば、「ワインボトルは750mlだけ?」「ワインボトルの形に決まりはあるの?」といった疑問が解消されるでしょう。
ワインのボトルサイズが750mlなのはなぜ?
ワインの容量が750mlなのは、イギリスがワインを輸出する際に750mlだったからだといわれています。
イギリスのワインが750mlである秘密は「ガロン」という単位です。ガロンはアメリカ(米ガロン)やイギリス(英ガロン)で使われている単位で、昔のイギリスでは「1ガロン=約4,500ml」でした。
1本750mlだとすると、1ダース(12本)で9000ml=2ガロンになるので、輸出時に効率がいいのです。
また、イギリスのボルドー地方では、ワイン1樽あたり225,000mlなので、1本750mlだとすると300本分に相当します。
さらに、ワイングラス1杯分の標準サイズは125ml、750mlのフルボトルは6杯分相当です。
750mlという単位は、ワインを計算するうえで非常に都合のいいサイズといえます。
日本のボトルサイズは720ml
ヨーロッパでフルボトルの容量は750mlが浸透したのに対して、日本の国産ワインは720mlが多く使用されています。
日本のワインが720mlなのも、単位が由来です。
日本でワインの販売が始まった当初は、一升瓶や4号瓶といった日本酒の瓶で販売されていました。
というのも、イギリスなどで使われている750mlの瓶をつくったり輸入したりするには、非常にコストがかかったからです。
日本酒は「合」という単位を使用します。1合=180mlで180ml×4=720ml、4合=720mlがそのまま定着し、現在も日本では720mlのワインが多いのです。
ほかにもある!ワインボトルのサイズ
ワインボトルには750ml以外にも、さまざまなサイズがあります。シャンパーニュ地方とボルドー地方で呼び方がやや異なるので、サイズとともにご紹介します。
容量 | ボルドー地方 | シャンパーニュ地方 |
---|---|---|
750ml(1本分) | ブテイユ(Bouteille) | ブテイユ(Bouteille) |
188ml(1/4本分) | キャール(Quart) | キャール(Quart) |
375ml(1/2本分) | ドゥミ・ブテイユ(Demi bouteille) フィエット(Fillette) | ドゥミ・ブテイユ(Demi bouteille) |
1,500ml(2本分) | マグナム(Mugnum) | マグナム(Mugnum) |
3,000ml(4本分) | ドゥブル・マグナム(Double mugnum) | ジェロボアム(Jeroboam) |
4,500ml(6本分) | ジェロボアム(Jeroboam) | レオボアム(Rehoboam) |
6,000ml(8本分) | アンぺリアル(Imperial) | マチュザレム(Mathusalem) |
9,000ml(12本分) | - | サルマナザール(Salmanazar) |
12,000ml(16本分) | - | バルタザール(Balthazar) |
15,000ml(20本分) | - | ナビュコドノゾール(Nabuchodonosor) |
ワインボトルのサイズによって、ワインの熟成の速度は異なります。
小さい瓶のほうが酸素と触れる面積が大きいので、熟成が早いです。反対に大きい瓶ほどゆっくりと熟成していきます。
産地によって異なるワインボトルの特徴
お酒売り場やワインショップに行くと、たくさんのワインが並んでいます。さまざまなエチケットがあるのはもちろん、ボトルの形に違いがあるのにも気づくはずです。
実はワインボトルの形には、生産地やワインのスタイルが反映しています。
ボルドー型
ボルドー型のワインボトルが「いかり肩」になっているのは、ワインの澱を貯めるためです。
フランスのボルドー地方では、渋みのしっかりした長期熟成向きのワインが多く造られています。
ボルドーワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどタンニンの多い品種を使用しており、熟成が長期になるほど多くの澱が発生します。
澱は飲んでも体に悪影響はありませんが、舌触りを悪くしてしまうため取り除かなくてはいけません。
しかし、ボルドー型のワインボトルであれば、ワインを注ぐ際に肩の部分で澱を堰き止められるので、濾す必要がなくなります。
ブルゴーニュ型
ブルゴーニュ型はボルドー型と比較すると少し太く「なで肩のワインボトル」です。
ブルゴーニュワインもボルドーワインと同じく、タンニンの強い長期熟成型のワインが多いですが、熟成期間内に何度も澱引きをします。
ブルゴーニュワインはボトルに詰められている段階で澱が少なくなっているため、ボトルの形もなだらかな曲線なのです。
シャンパーニュ型
シャンパーニュ型(シャンパン型)は、シャンパーニュやカヴァなどのスパークリングワインに使われるワインボトルです。
ブルゴーニュ型のようになで肩の形が特徴で、ボトルネックが細くすぼまった物や長くなった物など、さまざまな形状があります。
シャンパーニュ型は、ボトルの形そのものよりもボトルの閉じ方が特徴的です。
シャンパーニュ型では、スパークリングワインの泡を閉じ込めるために瓶の口よりも太いコルクが打ち込んだうえから、ミュズレという金具で押さえています。
炭酸ガスを含まないスティルワインの場合、瓶の口を押さえつけるような詰め方はしません。
ライン型・モーゼル型
ライン型・モーゼル型は、ブルゴーニュ型を細長くした形状のワインボトルです。ドイツワインのほとんどはライン型・モーゼル型に詰められているといっても過言ではありません。
白ワインは冷やして飲むことが多いので、早く冷やせるように細長いボトルが使用されるようになったといわれています。
ワインを生産する地方によって、ボトルの色が違うのが特徴です。
- ライン地方・・・茶色
- モーゼル地方・・・緑色
最近では、青色のボトルも増えてきています。
アルザス型
アルザス型(フルート型)は、ライン型・モーゼル型をさらに細長くしたようなワインボトルです。フランスのアルザス地方で造られたワインだけ、アルザス型に詰められています。
アルザス地方はフランスとドイツの国境地域で、ドイツ領だった歴史もあることから、今でもドイツの食文化などが色濃く残っています。
そのため、ワインボトルにもドイツの名残があり、ライン型・モーゼル型とよく似た形になっているようです。
プロヴァンス型
プロヴァンス型は、ボーリングのピンのようにボトルの腰がくびれた形が特徴のワインボトルです。
プロヴァンス地方は、南フランスにあるロゼワインの名産地で、プロヴァンス型はロゼワインを詰めるのに使われます。
プロヴァンス型のワインボトルは、ロゼワインの華やかさを一層引き立てます。
ボックスボイテル型
ボックスボイテル型ドイツのフランケン地方で使われている伝統的なワインボトルで、ボトルの胴の部分がふっくらと膨らんでいるのが特徴です。
フランケン地方のワイナリーが悪徳業者の偽ワインと見分けるために、独特の形をしたボックスボイテル型を採用したのが始まりと言われています。
ボックスボイテルとは「ヤギの陰嚢」をさします。
昔はヤギの陰嚢の皮を袋にしてワインを運搬しており、ワイン袋とボトルの形が似ていることからボックステイルと名付けられました。
1989年以降EUの規定により、ボックスボイテル型のワインボトルを使用できるのは、ドイツのフランケン地方のほか一部の地域に限られています。
バローロ型
イタリアのピエモンテ州で造られる高級赤ワイン、バローロ。バローロを詰められているのが、バローロ型です。
バローロ型には、ボルドー型のようにいかり肩のものやブルゴーニュ型のようになで肩のものなどさまざまな形状があります。
バローロ型にバローロワインが詰められているというよりは、「バローロワインが詰められているのがバローロ型のワインボトル」といえるかもしれません。
フィアスコ型
フィアスコ型は、イタリアのトスカーナ地方の赤ワイン「キャンティ」に使用されるワインボトルです。
フラスコのような丸みのあるボトルが、藁苞という藁で編まれた容器に入っています。藁苞には、ワインを運搬するボトルを割れにくくする目的があったようです。
しかし、現在使用している生産者は少なく、バローロ型のボトルが使われているキャンティも多くあります。
新世界の産地のワインボトル
新世界とは、アメリカやチリ、オーストラリアなど、「ワインの歴史が比較的浅い地域」を指します。
新世界のワインボトルは「○○型」といった決まった形はなく、使っているブドウ品種やワインのスタイルで選ぶのが特徴です。
たとえば、白ワインという理由でブルゴーニュ型を使用するケースがあります。
また、ボルドー地方で造られる白ワインには、ソーヴィニョン・ブランとセミヨンが使用されることが多いです。
そのため、使用するブドウ品種がソーヴィニョン・ブランとセミヨンの白ワインには、ボルドー型のワインボトルを使用するケースもあります。
新世界のワインのワインボトルには、生産者の考え方や想いが反映されるのです。
紫色の白ワイン「パープルレイン」:ボルドー型
紫ワインパープルレインは、西オーストラリアで生まれた新世界ワインです。
ボルドー地方と同じくセミヨンとソーヴィニヨン・ブランを使用していることから、ボトルはボルドー型が使用されています。
ボトル型よりも気になるのは、「白ワインなのに、なぜ綺麗な紫色なの?」という部分ではないでしょうか。
紫色の秘密は、チョウマメという植物の自然の色素です。
パープルレインの生産者の奥様は健康志向の強い人で、奥様好みの無添加・無着色のワインを造りたい気持ちがチョウマメにいきついたそうです。
チョウマメには抗酸化作用があり、ワインの酸化防止剤の代用になるのはもちろん、アンチエイジング効果や生活習慣病予防の効果も期待できます。
パープルレインの紫は、一人の醸造家の奥様への愛が創り出した奇跡の色なのです。
美しい紫色のワインを特別な人に贈ってみませんか?
まとめ
ワインボトルが750mlなのは、イギリスからの輸出に効率的だからです。いっぽう、日本ではイギリスと単位が異なり、日本酒と同じ「合」を使用したことから720mlが基準となっています。
また、ワインボトルにはさまざまな形があり、「ボルドー地方のワインはボルドー型」「スパークリングワインにはシャンパーニュ型」など、ワインの産地やスタイル、使用しているブドウ品種などが強く反映しています。
ワインボトルの特徴を覚えておけば、エチケットをじっくり見なくても自分の好みのワインを選べるようになるかもしれません。