ワインはなんといっても種類が豊富です。生きているうちに少しでも多くの種類を楽しみたいワイン好きなら、「毎晩飲んでも足りない」と、もどかしさを感じることでしょう。
とはいえ、気になるのは「休肝日」。
ワインを美味しく気兼ねなく楽しむには、健康への配慮も重要です。
本記事では、休肝日の重要性や期間について詳しくご紹介します。ワインをたくさん飲みたい人こそ、ぜひ最後までお読みください。
ワインを飲むなら休肝日を!
ワインの楽しみは、見た目・香り・味の3つです。ワインを余すところなく味わうなら、体のコンディションしっかり整えておく必要があります。
「お酒を飲んだ後に最近むかつきがある」
「健康診断が気になる」
体に不調があっては、心からワインは楽しめません。
厚生労働省によると休肝日とは、「肝臓を休めるために週に1日以上飲酒しない日を設けることを推奨する目的で作られた造語」です。
また、厚生労働省が2024年2月に公表した『健康に配慮した飲酒に関するガイドライン』には、健康に配慮した飲酒の仕方として「一週間のうち、飲酒をしない日を設ける(毎日飲み続けるといった継続しての飲酒を避ける)」と明示されています。
健康的に末永くワインと付き合っていくために、休肝日は不可欠です。
ワインを飲んで休肝日がなければどうなる!?健康リスク3選
先にもお伝えしたとおり、健康に配慮した飲酒の仕方に休肝日は不可欠です。
しかし、「お酒を飲み続けると身体を壊す」「健康を損なうから休肝日は必要」といわれても、いまいちピンとこないかもしれません。
ここでは、休肝日がなかったときの健康リスクを具体的に3つご紹介します。
- アルコール依存症
- 肝障害
- 生活習慣病
思い当たることがないかチェックしてみましょう。
【休肝日がないリスク①】アルコール依存症になる
ご存じの方も多いと思いますが、アルコールには依存性があります。
アルコール依存症とは「大量のお酒を長期にわたって飲み続けることで、お酒がないといられなくなる状態」のことです。
アルコール依存症は精神面・身体面ともに影響が表れるため、生活面に支障が出てしまいます。
アルコール依存症になると、アルコールが体から抜けたときの以下のような症状を抑えるために飲酒を繰り返してしまうのです。
- イライラ
- 不眠
- 手の震え
- 頭痛
- 吐き気
- 動悸
- 発汗
アルコール依存症は、飲酒運転や暴力、虐待など、本人の健康被害以外の問題にも結びつく恐れがあります。
自分はもちろん周囲の人を守るためにも、お酒は適度に楽しむようにしましょう。
【休肝日がないリスク②】肝臓病を引き起こす
アルコールの過剰摂取は、さまざまな臓器にダメージを与えますが、とくに深刻なのが肝臓病です。
アルコールの影響で引き起こされる肝臓病は、以下のようなものがあります。
肝臓病 | 特徴 |
---|---|
脂肪肝 | ・飲みすぎで最初になる肝臓病 ・飲酒をやめれば短期間で回復する |
アルコール性肝炎 | ・脂肪肝でさらに大量の飲酒をした場合に起こる ・重症化すると死亡する恐れがある ・アルコール依存症になっている可能性がある |
肝硬変 | ・飲酒を続けると死亡の危機 ・重症化すると吐血や意識障害が起こる ・アルコール依存症の可能性が高い |
肝臓は「沈黙の臓器」といわれ、よほど重篤化しないと自覚症状がありません。つまり、痛みや違和感に気づいた頃には、手遅れの恐れもあるのです。 お酒を飲む機会の多い方は、症状がなくても定期的な血液検査をおすすめします。
【休肝日がないリスク③】生活習慣病になる
飲酒期間が長いほど飲酒量が多いほど、さまざまな生活習慣病のリスクも高まります。
生活習慣病とは「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群(引用元:厚生労働省『e-ヘルスネット』」のことです。
具体的には、以下のような病気をいいます。
- 糖尿病
- 肥満
- 脂質異常症
- 高血圧症
- 脳卒中
たとえば、アルコールにもカロリーがあります。過剰摂取するとカロリー過多や血糖値上昇になり、糖尿病を引き起こすのです。
また、飲酒は中性脂肪が増える原因となり、脂質異常症になる恐れもあります。
生活習慣病は最悪の場合、命に関わる病気です。適度な飲酒と休肝日で、生活習慣をコントロールしましょう。
休肝日は週に2日が理想
公益社団法人アルコール健康医学協会によると、休肝日は週に2日設けるのが適切とされています。
つくろうよ 週に二日は休肝日
引用元:公益社団法人アルコール健康医学協会「適正飲酒の10か条 第4条」
飲酒をした人の体の中では、眠っている間も肝臓はひたすらアルコールを分解するために働き続けています。
毎日飲酒を続けると肝臓の休む時間はなく、疲労がたまり障害が出てしまうのです。週に2日は肝臓を休め、労わるようにしましょう。
また、肝臓にかかる負荷は、連続で飲酒をする日数が多いほど大きくなります。
「5日飲酒して2日休肝日」よりも、「2~3日飲酒をしたら1日休肝日」というサイクルにし、休肝日の効果を最大限に活かしましょう。
休肝日は何する?ワインを飲まない日の過ごし方
休肝日は、飲酒をせずに肝臓をストレスから解放します。
とはいえ、ただぼんやり家で過ごしていると、よけいに「ワインを飲みたい!」という欲求に駆られてしまうでしょう。
休肝日には、軽い運動で気を紛らわせたり、バランスのいい食事で体を整えたりするのがおすすめです。飲酒やワイン、お酒というワードから遠ざかれば、休肝日を上手に過ごせます。
どうしても「ワインの味が恋しい」というときは、ノンアルコールワインで気を紛らわせるのもアリです。
心身へストレスを最小限に、無理なく休肝日を乗り越えましょう。
【休肝日の過ごし方①】運動をする
休肝日に気を紛らわせるなら、有酸素運動をしてみましょう。
有酸素運動は、体内の脂肪をエネルギー源として燃焼して使うので、内臓脂肪の減少にも効果的。内蔵脂肪が減少すれば、糖尿病や肥満、脂質異常症、高血圧症といった生活習慣病の予防・改善にもなります。
以下が有酸素運動の一例です。
- ウォーキング
- ランニング
- サイクリング
- 水泳
- 縄跳び
- ヨガ
運動に不慣れな方は、1日あたり30分の運動から始めてみましょう。「一気に30分がキツイ」という場合は、朝・昼・夕の3回に分割しても問題ありません。
運動の習慣化は、気を紛らわせるだけでなく健康増進も期待できます。
【休肝日の過ごし方②】バランスのいい食事をとる
お酒が飲めないとなると、ついつい「食に走ってしまう」という方も多いはずです。飲酒と一緒についつい食べ過ぎたという方もいらっしゃるでしょう。
休肝日には、断食のような極端な行動をとる必要はありません。むしろ、バランスのいい食事をして飲酒のダメージを回復するのが正解です。
しかし、「バランスいい」は意外と難しいですよね。
バランスのいい食事のポイントは3つあります。
- ごぼうやきのこなど食物繊維の多い食材をたくさん取る
- 肉よりも魚を食べる
- お茶碗3分の2のご飯
さば定食や豚汁などは、まさに理想の食事です!
また、1日2リットルを目安にカフェインの入っていない水分をたっぷり摂取しましょう。
カフェインとアルコールは利尿作用があり、飲酒で脱水状態になった体にカフェインを入れるのはおすすめできません。
休肝日には、ほっこり和食とノンカフェインの飲み物が最適です。
【休肝日の過ごし方③】ノンアルコールワインを飲む
お酒好きの方はとくに休肝日に「ちょっと一杯だけ」「どうしてもワインが飲みたい」というアルコールの誘惑に襲われてしまうかもしれません。
休肝日にお酒を飲まないようにするのは前提ですが、我慢しすぎてストレスを感じるのはよくないです。
どうしても飲みたくなってしまったら、ノンアルコールワインやノンアルコ―ルビールといった「ノンアルコール飲料」で、飲んだ気分だけでも味わいましょう。
近頃はウィスキーや焼酎、日本酒などでもノンアルコール飲料が販売されており、さまざまなテイストを楽しめます。
ただし、ノンアルコールといっても大量に飲むのは禁物です。日本のノンアルコールの定義はアルコール1%未満なので、必ずしもゼロアルコールではありません。
ラベルの表記を確認しながら、ちょっと一杯程度に楽しむようにしましょう。
ワインの1日の適正量は赤ワインと白ワインで違う?
ここまでの話しの腰を折るようですが、ワインを1人で1本空けた人とグラス1杯だけ飲んだ人の肝臓が同じ休肝日で回復するわけがありません。
休肝日の効果を発揮するには、ワインの適正量を知って過度にアルコールを摂取しないことが大切です。
厚生労働省の健康日本21によると、1日平均純アルコールで20gが「節度ある適度な飲酒」とされています。
つまり、ワインが赤か白かという問題よりも、アルコール度数で適正量が変わるのです。
たとえば、アルコール度数12%のワインなら、1日にグラスで1.5杯程度飲めます。2~3日分をまとめて飲むとすると、1回に約3~4.5杯です。
「意外と多い」「少なくて飲んだ気がしない」などさまざまな意見があるでしょうが、ワインと末永く付き合いたいなら適正量からはみ出し過ぎない飲酒をおすすめします。
「お酒に強い=肝臓が強い」は嘘
お酒に強い人と弱い人の違いは、肝臓の強さだと思われがちですが大きな誤解です。
お酒強い人というのは遺伝的に酔いにくい体質なだけであって、肝臓のアルコールを分解する能力が優れているわけではありません。
つまり、「お酒に強い=酔いにくい」という理由でどんどんお酒を飲み進めると、かえって健康を損なう結果になるのです。
また、お酒に強い・弱いは遺伝子による先天的なものなので、後天的に強くなることはほぼあり得ません。
ひと昔前には「サークルや会社の飲み会で鍛えられた」という話しもよく聞かれましたが、無理に飲んだからといって強くなることはないと知っておきましょう。
科学が裏付ける!日本人はお酒に弱い
日本人を含むモンゴロイド系の人は、ヨーロッパ系(白人)やアフリカ系(黒人)に比べてお酒に弱いといわれています。
アルコールは体内に入ると、肝臓で毒性の強い「アセトアルデヒド」に分解されます。お酒に酔ったときの頭痛や吐き気といった症状を引き起こすのは、アセトアルデヒドです。
毒性の強いアセトアルデヒドを分解してくれるのが、「ALDH2」ですが、日本人の約40%はALDH2の活性が弱いためお酒に弱いといわれています。
さらに4%の人は、ALDH2がまったく活性せずお酒が飲めない体質です。
ALDH2活性タイプ | お酒に強い・弱い | 人種 | ||
---|---|---|---|---|
ヨーロッパ系 | アフリカ系 | 日本人(モンゴロイド系) | ||
活性型 | 強い | 100% | 100% | 56% |
低活性型 | ほどほど~弱い | 0% | 0% | 40% |
不活性型 | 飲めない | 0% | 0% | 4% |
繰り返しお伝えしますが、ALDH2の活性は遺伝によるもので後から活性できるものではありません。
お酒は自分のペースで楽しく飲むようにしましょう。
休肝日を習慣づけてワインを心から楽しもう
「今日は飲みたい気分」
「嫌なことを忘れたい」
ワインやお酒をたくさん飲んだ次の日は、必ず休肝日を設けて体を労わってあげましょう。
休肝日を取らずにお酒を飲み続けると、生活習慣病や肝臓病などのリスクがあります。体を労わるのを怠ったばかりに、大好きなワインとも強制的に別れなくてはいけなくなるかもしれません。
また、「酔いにくいから」と、お酒をぐいぐいのむのは危険です。お酒に酔いにくいのはアセトアルデヒドを分解する力が強いだけで、肝臓が特別強いわけではありません。
お酒は無理せず自分のペースで楽しみ、楽しんだ次の日はしっかりと肝臓を労わってあげましょう。
ワインなどのお酒と末永く付き合っていくためのコツですよ。