フォーマルな席でワインを飲む時、どのように振る舞うのが正解か迷ってしまうこともあるのではないでしょうか?
今回は、どんな席でも恥ずかしくない美しいワイングラスの持ち方について解説します。
日本と海外での違いや男女の違いについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
持ち方の前に!ワイングラスの部位と構造
ワイングラスは大きく4つのパーツに分けられます。まずは、それぞれのパーツについて解説していきましょう!
ワイングラスの脚【ステム】
グラスの脚にあたる部分を「ステム」といいます。
ワインの美しい色味を観察したいとき、ステムを持つことによって指が邪魔にならずゆっくりと堪能できます。
ワイングラスの中央【ボウル】
ワインを注ぐ本体の部分が「ボウル」です。ワイングラスによってボウルの大きさや形状が異なり、ワインの香りの広がり方が変わってきます。
赤ワイン用のグラスはボウルが大きくて深いワイングラスが多く、豊かな香りと赤ワイン特有の渋みをより美味しく楽しめます。
一方で白ワイン用のグラスは、ボウルが小ぶりのワイングラスが一般的。冷えたワインがぬるくなる前に飲み切れることや、フレッシュな香りやミネラル感を味わえるのが特徴です。
ワイングラスの縁【リム】
直接口が触れるグラスの縁の部分が「リム」です。
リムが薄いほど口当たりがよいとされており、ストレスなくワインの繊細な味わいを感じることができます。
ワイングラスの底【フット・プレート】
テーブルと接するワイングラスの底の部分を「フット」または「プレート」といいます。
ワイングラスを安定して支える役割を担っており、ボウルの直径と同じ大きさであることが一般的です。
身につけておきたいワイングラスのマナー
フォーマルな場面では気をつけなければならないマナーがいくつかあります。ここでは、身につけておきたい基本的なマナーをご紹介します。
乾杯ではグラスを合わせない
日本では乾杯のとき、グラス同士を合わせて乾杯することが多いのではないでしょうか。しかし、この方法は国際的にはマナー違反にあたります。
ワイングラスのボウルやリムの部分はできるだけ薄くつくられているため、ぶつけた衝撃で割れてしまったりヒビが入ったりする危険性があります。
乾杯のときはワイングラスを目線の高さまで持ち上げて、アイコンタクトや軽い会釈をするのが正しいマナーです。
注いでもらう時はグラスを持たない
ホテルや高級レストランなどでは、ワインは店員やソムリエに注いでもらうのが一般的。そんなとき、ワインを注ぎやすいようにワイングラスを持ち上げたりすることはマナー違反です。
善意でグラスを持ち上げたつもりでも実際には注ぎにくくさせてしまっており、ワインがこぼれるリスクを高めてしまっています。
ワイングラスには触れず、置いたままの状態で注いでもらいましょう。
ワインを回す時はステムを持つ
ワイングラスを回すことでワインに空気を含ませ、香りや味わいを引き立たせることを「スワリング」といいます。
スワリングをするときは、ステムを持つのがマナーです。
また右利きの人は左回し、左利きの人は右回しにすることも重要なポイント。そうすることで、万が一ワインがこぼれてしまったときも自分にかかり、周囲の人に迷惑をかけずに済みます。
ワイングラスの持ち方!日本と海外で違う?本場フランスは?
実は、ワイングラスの持ち方に正式なマナーはありません。そのため、各地域で持ち方に差があるようです。
地域 | ワイングラスの持ち方 |
---|---|
日本 | ステムを持つ |
フランス | ステムを持つ |
その他欧米諸国 | ボウルを持つ |
日本ではステムを持つことが正しいマナーだと認識している人が多いのではないでしょうか。しかしフランスと日本以外では、ボウル部分を持つのが主流のようです。
実際はステムとボウルどちらを持ってもメリットがあり、マナー違反になることはありません。
なぜ国により持ち方が違う?それぞれのメリットを解説
グラスの持ち方に正式なマナーはなく、国ごとにグラスの持ち方に差があることがわかりました。では、それぞれどのようなメリットがあるのでしょうか?
ステムを持つメリットとは?
ステムを持つスタイルは、日本やフランスなどの限られた地域でしか見られないようです。ステムを持つスタイルには、どのようなメリットがあるのかを確認していきましょう。
手の温度がワインに伝わらない
ステムを持つ最大のメリットは、「手の温度がワインに伝わらないこと」です。ワインは温度があがると香りや味わいに変化が生じてしまいます。
そのため本場フランスやソムリエの方は、必ずといっていいほどステムを持つスタイルを選ぶのです。
とくに、レストランでワインを飲むときは、ステムを持って味わうことが正式なマナーとされています。レストランでワインをオーダーすると、ソムリエが適温を保って提供してくれるでしょう。
せっかく適温で提供してもらっても、手の温度で温度が変わるとソムリエのおもてなしが台無しになってしまいます。
ワインの色調を確認しやすい
ワインは五感を使って楽しむお酒。ワインの色調にはさまざまな情報が隠れています。
ワインの色調は、熟成期間や醸造方法、ヴィンテージの影響を大きく受けるのです。しかしワイングラスを手で覆うように持ってしまうと、ワインの色調が綺麗に見られません。
ワインが造られる過程やヴィンテージなどの情報を得るためにも、本場フランスやソムリエはステムを持つようにしています。
ステムを持つ方がエレガントな印象になる
ワインを美しく持つ方法は、「ステムの下部を親指と人差し指、中指でつまむ様に持ち、薬指と小指をプレートに添える」ことです。
ステムの下部を持つことで、所作にエレガントさがうまれます。またボウルに指紋がつくのも避けられるので、グラスを美しい状態に保てるでしょう。
高級レストランや結婚披露宴などのフォーマルな場所では、ステムを持つ方がいい印象を与えます。
普段はボウルを持つスタイルでワインを飲む方も、フォーマルなシーンではステムを持つようにするとよいでしょう。
ボウルを持つメリットとは?
ステムで持つスタイルのメリットを確認すると、非常に理にかなっているところが多いとわかりました。ワインを飲む場合は、ステムを持つ方がメリットが多いのです。
ではボウルを持つスタイルにはどのようなメリットがあるのでしょうか?
安定感に優れている
ボウルを持つメリットは、なんといっても安定感があることです。
ステムを持つと不安定なため、少しぶつかっただけでグラスがぐらりと傾いてこぼれてしまう可能性があります。しかしボウルを包むように持てば、少しの衝動くらいでこぼす心配はありません。
人の多い立食パーティーではワインをこぼす心配がないように、ボウル部分を持つのがおすすめです。
日本の場合ではテーブルではステムを持ち、立食ではボウルを持つなど、TPOに合わせて持ち方を変えるのがスマートなマナーといえるでしょう。
なぜボウルを持つスタイルが人気なのか
ステムを持つか、ボウルを持つか…それぞれのスタイルにメリットがありますが、ワインの本質を楽しむためにはステムを持つことが理にかなっていることがわかります。
ボウルを持つスタイルは、グラスに指紋がついて汚れてしまったり、温度変化によりワインの風味が落ちてしまったりとデメリットも多くプロは選ばない持ち方です。
ですが、実際に広く使われているスタイルは、ボウルのようです。ではなぜ、機能性の優れたステムを持つスタイルを採用せず、世界ではボウルをもつスタイルが多いのでしょうか?
これはイメージ問題が深く直結しているのです。ステムを持つスタイルは上品ですが、「ワイン愛好家きどり」「気難しい人」だと思われる場合があるようです。
とくにハリウッドスターやセレブなど、イメージを気にしている人にとってマイナスイメージは避けたいですよね。
親しみやすさを演出できることや、仕事の上での立食パーティーが多いこともあり、ボウルを持つスタイルが理にかなっているのでしょう。
映画やニュースでスターがワインを飲むシーンが映るとボウルを持っているので、一般にも広く浸透したと考えられています。
逆にこだわりの強いフランスはステムをもつスタイルが一般的です。
日本はボジョレー・ヌーボーからワインの人気が急上昇したので、フランスのワイン文化にならって持ち方がフランスと同様になったのかもしれませんね。
男性と女性とで持ち方に違いはある?
結論から伝えると、男性と女性でワイングラスの持ち方のマナーは変わりません。
ですが映画のワンシーンやパーティーなどでは男性はボウルの部分を持つ人が多く、女性はステムを持つ人が多く見受けられます。
ステムを持って優雅にワインを楽しむ姿は、見た目や所作が上品でエレガントに見えるのです。より美しく魅せたいという女性ならではの持ち方かもしれませんね。
いまさら聞けない!ワインに適したワイングラスの紹介
ワイングラスには、さまざまな形が存在します。これらの形にはそれぞれメリットがあり、グラスごとに適したワインが異なるのです。
ワイングラスの持ち方やマナーを学んだところで、次はそれぞれのグラスの役割を紹介します。グラスの持ち方はもちろんのこと、適切なグラス選びをすることは大切なマナーのひとつです。
フルートグラス
「フルートグラス」は細長い形状のグラスで、シャンパンやスパークリングワインに適した形です。
最大の特徴は、空気と接する面が少ないこと。空気に触れる面積が少ないため炭酸が抜けにくく、シュワシュワとした泡が長持ちします。
スパークリングワインから発生する泡が綺麗に立ちのぼる姿が大変美しい、エレガントなグラスです。
万能グラス
「万能グラス」は、ボウルが膨らみ口の部分がすぼまった形状です。ワイングラスといえば、多くの方が連想する標準的な形といえるでしょう。
万能グラスはバランス性に優れ、その名の通りさまざまなワインに対応できる万能タイプのグラスです。白やロゼ、オレンジ、赤と種類を選ばずに使用できます。
ワイングラスを購入するときに、最初に選びたい形状ですね。
シャルドネグラス
「シャルドネグラス」は、ボウル部分が大ぶりで飲み口も広がった形状のグラスです。ボウル部分が大きいので香りや果実味が強調されます。
そのため上質な熟成タイプのシャルドネと相性のよいグラスです。
ブルゴーニュ地方のシャルドネやアメリカ・カリフォルニア産の樽のきいた濃厚な白ワインと合わせると、ワインの魅力がより引き立ちます。
ブルゴーニュグラス
「ブルゴーニュグラス」は、ボウルがバルーンのように膨らんだ大ぶりのグラスです。飲み口部分はすぼまっているのでグラス内部に香りが留まり、ワインのアロマを存分に楽しめます。
香り高くのびやかな酸が魅力的なピノ・ノワールを使用した赤ワインを飲む場合に適したグラスです。
香り豊かなライトボディの赤ワインと相性抜群。特にフランス・ブルゴーニュ地方や北イタリア、ドイツなどの冷涼な地域のピノ・ノワールの魅力を引き立てるのが得意なグラスです。
ボルドーグラス
ボルドーグラスは、チューリップのような形状をした大ぶりのグラスです。
この形状のグラスはタンニンをまろやかにし、果実味や甘みを強調してくれます。凝縮感や複雑味のあるワインの魅力を引き出したいときにおすすめのグラスといえるでしょう。
主にフルボディの赤ワインに使用するグラスです。
フランス・ボルドー地方やアメリカ産のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどのぶどう品種を使用したタンニン豊富で凝縮感のあるワインの魅力を引き立てます。
ボウルが大きく空気にワインが触れる面積が多いため、デキャンターして楽しむようなワインにぴったりですね!
まとめ
ワイングラスの持ち方に正解はありませんが、TPOやワインの楽しみ方に合わせて柔軟に変えることが大切です。
ワインの本質を楽しむときやテーブルでの会食ではステムをもち、立食形式のパーティーではボウルをもつようにすれば完璧ですね!
この記事を参考にして、場面に応じたマナーを持って優雅にワインを楽しんでくださいね。