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アルコール度数の高いワインに注目!酒精強化ワインとは?
ワインのアルコール度数は、約12%といわれています。ウィスキーや焼酎と比較すると、通常のワインのアルコール度数は高くないです。
しかし、なかには度数の高いワインも存在します。
本記事では、アルコール度数の高いワインを造るポイントや種類について詳しく解説していきます。
最後まで読めば、「ワインのアルコール度数には何が影響している?」「世界のアルコール度数の高いワインは?」といった疑問が解消されるでしょう。
ワインの平均的なアルコール度数
厚生労働省の公表している「アルコール」のデータによると、ワインのアルコールの目安は12%となっています。
お酒の種類 | アルコール度数 |
---|---|
ワイン(1杯120ml) | 12% |
ビール(中瓶1本500ml) | 5% |
清酒(1合180ml) | 15% |
ウイスキー・ブランデー(ダブル60ml) | 43% |
焼酎(1合180ml) | 35% |
ワインのアルコール度数は、お酒のなかで決して高くはないとわかるでしょう。
また、ワイン種類ごとにアルコール度数は異なります。
- 白ワイン:10~13%
- 赤ワイン:12〜15%
- ロゼワイン:11〜13%
- スパークリングワイン:11〜12%
ワインのアルコール度数に興味のある方は、以下の記事を参考にしてください。
アルコール度数が高いワインは糖度も高い?
アルコール度数の高いワインは、製造に使用するブドウの糖度も高いです。
ワインの醸造過程のアルコール発酵という工程では、酵母が糖分を分解してアルコールと二酸化炭素を発生させます。
つまり、単純にいうと糖分が多いほどアルコールもたくさん生成されるのです。
発酵によるアルコールの発生は、糖度2度に対してアルコール1%といわれています。たとえば、糖度が22度だとアルコール度数は11%です。
発酵する期間で違いはありますが、ワインの元になるブドウジュースのなかの糖分が多いほど、アルコール度数の高いワインが造れるといえます。
ワインのアルコール度数を高くする4つの要素
ワインのアルコール度数は、ブドウの糖度が影響するとご紹介しました。
ブドウの糖度を高くしてアルコール度数を高める要素は、大きく4つです。
- 使用するブドウの品種
- ブドウの生産地
- ブドウを収穫する時期
- ブドウを陰干しする
食用のブドウと同じように、ワイン用のブドウにも品種や生産地ごとに風味の個性があります。果実を若いうちに収穫するのか、しっかり成熟するまで待つのかによっても糖度は異なるでしょう。
また、ブドウを一定期間陰干しすると、ブドウの水分が抜け糖度が高まります。
使用するブドウの品種
ブドウの品種は食用とワイン用を合わせると、10,000種以上にのぼります。ワイン用のブドウ品種は食用ブドウ品種に比べて、糖度が高いのが特徴です。
アルコール度数が高くなる傾向があるブドウ品種で、とくに有名なのは「シラー」。
「ゲヴュルツトラミネール」や「ジンファンデル」、「グルナッシュ」なども糖度が高く、アルコール度数が15%を超えるようなワインも造られます。
ブドウの生産地
ワインは、産地の気候や土壌の特徴によって味わいが異なります。アルコ―ル度数を高めるための糖度の高いブドウを育てるには、日照時間が長く温暖な気候が不可欠です。
単純に言ってしまえば、赤道に近い地域で育てるほど、糖度の高いブドウが育ちます。
たとえば、同じ「シャルドネ」でも、冷涼なフランスのブルゴーニュ地方で造られると糖度は低くなります。
いっぽう、アメリカのカルフォルニア州のシャルドネは、比較的温暖で収穫時期に雨が降らないため、糖度が上がりやすいです。
ブドウを収穫する時期
ブドウは収穫する時期を遅くするほど完熟に近づくため、糖度が高くなります。
ブドウができるまでの1年のサイクルは、ざっくりと以下のようなイメージです。
- 冬・・・休眠期
- 春・・・芽吹き
- 夏・・・開花~結実
- 秋・・・着色~収穫
ブドウの収穫時期は品種によるものの、開花してから100日程度といわれています。
しかし、1990年代にアルコール度数の高いパワフルなワインが流行した際には、開花してから120日間など、しっかりと完熟させてから収穫する生産者も多かったようです。
干しブドウを使用
干しブドウを陰干ししてから醸造する方法を「アパッシメント」といい、収穫したブドウを風通しのいい部屋で3~6ヶ月ほど陰干ししてからワインを醸造します。
アパッシメントは、ヨーロッパ各地で行われている製造方法で、とくにイタリアが盛んな地域です。
果物をドライフルーツにすると、水分が抜けて自然と甘味を強く感じるように、ブドウも干しブドウにすると糖度が高くなります。
アルコール度数20度以上も!酒精強化ワイン
酒精強化ワインは、醸造の工程のなかでアルコールを添加して、ワインのアルコール度数を高めたワイン」のことです。
英語では、「フォーティファイドワイン(fortified wine)=強化されたワイン」ともいいます。
フォーティの字面だけ見ると「アルコール度数40度のワイン」と誤解しそうですが、そこまでアルコール度数は高くありません。
とはいえ、酒精強化ワインは20度以上のワインもあり、通常のワインと比べるとアルコール度数は高めです。
また、通常のワインは一度開封したらなるべく早く飲み切るのがベストですが、酒精強化ワインは、開栓後も酸化しにくいという特徴があります。
たとえば、酒精強化ワインの一つであるポートワインなら開栓後3年程度は保存可能です。
マディラワインは醸造過程で酸化熟成されているので、開栓した後も味わいの変化はほぼありません。
代表的な酒精強化ワインの種類
酒精強化ワインの種類 | アルコール度数 |
---|---|
シェリー | 15~22% |
ポートワイン | 19~22% |
マディラワイン | 17〜22% |
マルサラワイン | 15~22% |
よく知られているのは、世界の三大酒精強化ワインといわれる「シェリー」「ポートワイン」「マディラワイン」。
また、マルサラワインを加え、世界の四大酒精強化ワインといわれることもあります。
ここからは、世界の三大酒精強化ワインの特徴をご紹介しましょう。
シェリー:スペイン
シェリーが造られているのは、スペインのアンダルシア地方です。
シェリーには、パロミノ・フィノやパロミノ・デ・ヘレス、ペドロ・ヒメネス、モスカテルといった白ブドウ品種を単一で使用します。
シェリーの味わいは、辛口と天然甘口、辛口と天然甘口をブレンドしたブレンド甘口の3つのカテゴリーがあり、それぞれのカテゴリーはいくつかの種類に分かれています。
タイプ | 種類 |
---|---|
辛口 | フィノ マンサニーリャ アモンティリャード オロロソ |
天然甘口 | ペドロ・ヒメネス モスカテル |
ブレンド甘口 | クリーム(オロロソベース) ミディアム(アモンティリャードベース) ペイルクリーム(フィノベース) |
シェリーのなかでももっとも注目されているのは、辛口です。同じ辛口でも種類によって驚くほど味わいが異なるので、ぜひ飲み比べてみてください。
ポートワイン:ポルトガル
ポートワインは、ポルトガルのアルト・ドウロ地区で造られる、ルビー色や琥珀色をしたワインです。外見の美しさから「ポルトガルの宝石」ともいわれています。
ポートワインは、アルコール発酵を止める際にブランデーを添加してアルコール度数を引き揚げます。発酵を途中で止めたワインには糖分が残るので、甘口に仕上がるのです。
ポートワインの赤ワインは「レッド・ポート」、白ワインは「ホワイト・ポート」といいます。
レッド・ポートは、ルビータイプとトゥニータイプに区別でき、特徴は以下のとおりです。
- ルビータイプ・・・樽熟成3年程度と比較的若い
- トゥニータイプ・・・小さい樽などで熟成しながら酸化を進め、琥珀色になってから出荷する
ルビータイプは樽熟成期間3年程度なので、基本的に安価です。しかし、ルビータイプには「スペシャルタイプ」が存在します。
スペシャルタイプの種類 | 特徴 |
---|---|
ヴィンテージ・ポート | スペシャルタイプのなかでもっとも高級。 優れた年のブドウのみ使用。 100年以上の熟成が可能。 瓶詰時にろ過しない。 |
レイト・ボトルド・ヴィンテージ・ポート | ヴィンテージ・ポートの次に優れたブドウを使用。 4~6年程度樽熟成させる。 |
マデイラワイン:ポルトガル
マデイラワインは、ポルトガルのマデイラ諸島で造られます。
アルコール発酵の途中か発酵後に、アルコール度数96%のブランデーを添加する非常に保存性に優れた酒精強化ワインです。
マデイラワインの寿命は非常に長く、100年以上前のマデイラワインも多数現存しています。
マデイラワインは、アルコールを添加して一定期間落ち着かせた後、温めて熟成させるのが大きな特徴です。加熱することで、香ばしい風味が生まれます。
加熱方法は2つあり、加熱後の熟成期間は早くて3年ほどです。
- エストファ・・・温水を使った人工加熱
- カンテイロ・・・太陽熱を利用した自然加熱
また、マデイラはブドウ品種によって味わいが大きく異なります。マデイラによく使われるブドウ品種をご紹介しましょう。
ブドウ品種 | 味わい |
---|---|
セルシアル | 辛口 |
ヴェルデーリョ | 中辛口 |
ボアル | 中甘口 |
マルヴァジア | 甘口 |
辛口のマデイラは食前酒に、甘口は食後に飲まれるのが一般的です。
まとめ
ワインのアルコール度数を高めるには、糖度の高いブドウ品種を温暖な気候の土地で、しっかり熟させてから収穫するのが重要です。
収穫したブドウは干しブドウにしてから使用すると、糖分がぎゅっと凝縮されます。
また、酒精強化ワインは、醸造工程のなかでアルコールを添加して、してアルコール度数を高めたワインです。
シェリーやポートワインなど、それぞれ個性的な醸造方法で造られており、アルコール度数は20%超えるものもあります。
アルコール度数が高いこととワインの美味しさは比例するものではありませんが、たまにはアルコール強めのワインに酔うのもいいかもしれませんね。